ホワイトニングによって天然の歯が輝くような白さを取り戻す一方で、「差し歯」や「被せ物」といった人工の歯は、残念ながらその色を一切変えることができません。この事実は、ホワイトニングを検討する上で絶対に知っておかなければならない最も重要な基本原則です。なぜこのような違いが生まれるのか、その理由はホワイトニングの化学的なメカニズムと、差し歯の材質的な特性にあります。歯科医院で行われるホワイトニングでは、過酸化水素や過酸化尿素を主成分とする薬剤が用いられます。これらの薬剤は、歯の表面にある半透明のエナメル質を安全に通過し、その内側にある象牙質へと浸透していきます。歯の黄ばみの主な原因は、この象牙質に長年蓄積された有機性の色素分子です。ホワイトニング剤は、これらの色素分子を化学的に分解し、無色透明の小さな分子へと変えることで、歯を内側から「漂白」します。この作用は、あくまで生体組織である天然の歯に対してのみ有効です。一方、差し歯や被せ物は、主にセラミック(陶材)やレジン(プラスチック)といった人工の材料で作られています。これらの材料は、製造された時点で色が決定されており、化学的に非常に安定した状態にあります。そのため、ホワイトニング剤が表面に付着しても、内部に浸透して色素を分解するような化学反応は一切起こりません。例えるなら、白いTシャツに付いたシミを漂白剤で落とすことはできても、元々グレーのTシャツを漂白剤で白くすることはできないのと同じ原理です。この根本的な違いを理解することが、差し歯がある方のホワイトニング計画における、すべての出発点となります。