白い歯への憧れから、ドラッグストアで「ホワイトニング」と名のつく歯磨き粉を手に取る人は少なくありません。しかし、多くの方が期待する「歯そのものを真っ白にする」という効果は、日本国内で市販されている歯磨き粉では実現が難しいというのが、歯科専門家としての見解です。日本の薬機法では、歯を内側から漂白する作用を持つ過酸化水素などの成分を市販の歯磨き粉に配合することは認められていません。そのため、私たちが手にすることができる製品の主な役割は、歯の表面に付着したステイン、つまり飲食物などによる着色汚れを浮かせて除去することにあります。成分表示でよく見かけるポリエチレングリコールやポリリン酸ナトリウムといったものが、このステイン除去の働きを担っています。これらは、歯の表面にこびりついた汚れを化学的に分解し、ブラッシングによって落としやすくすることで、歯が本来持っている自然な色合いを取り戻す手助けをしてくれるのです。歯医者が患者さんに市販の歯磨き粉をおすすめする場合、この着色除去効果に加えて、歯の健康を損なわないかという点を重視します。例えば、研磨剤の粒子が粗すぎてエナメル質を傷つける恐れがないか、虫歯予防に不可欠なフッ素が適切に配合されているか、といった点です。したがって、市販のホワイトニング歯磨き粉は、歯を漂白する魔法のアイテムではなく、日々の食事で付着する汚れをリセットし、歯科医院でのクリーニング後のきれいな状態を維持するための「メンテナンスアイテム」と位置づけるのが最も正確な理解と言えるでしょう。