ドラッグストアや、インターネットで、手軽に購入できる「ホワイトニング歯磨き粉」や「歯の消しゴム」、「ホワイトニングシート」といった、市販のセルフホワイトニング製品。歯科医院に通う時間や、費用をかけずに、歯を白くできるなら、と、多くの人が、一度は試したことがあるかもしれません。しかし、これらの市販品で得られる効果と、歯科医院で行う、本格的なホワイトニングとの間には、決定的な「違い」と「限界」があることを、正しく理解しておく必要があります。その最大の違いは、作用のメカニズムにあります。歯科医院で使用されるホワイトニング剤には、「過酸化水素」や「過酸化尿素」といった、歯の内部の色素そのものを、化学的に分解・漂白する成分が含まれています。これにより、歯本来の色以上に、歯を「白くする」ことが可能です。一方、日本の法律では、市販の歯磨き粉などに、これらの漂白成分を、配合することは、認められていません。したがって、市販のホワイトニング製品の、主な役割は、歯の表面に付着した、コーヒー、お茶、タバコのヤニといった、「着色汚れ（ステイン）」を、物理的に「浮かせて、落とす」ことにあります。そのために、ポリリン酸ナトリウムや、ポリエチレングリコールといった、ステイン除去を助ける化学成分や、研磨剤が、配合されています。つまり、セルフホワイトニング製品の効果は、あくまで、歯の表面の汚れを取り除き、その歯が、本来持っていた「元の色」に、近づけることであり、歯そのものの色を、漂白して、白くするわけではないのです。したがって、もともと歯の色が、黄色っぽい人の場合、いくら市販の製品を使っても、それ以上に白くなることは、期待できません。また、研磨剤の含有量が多い製品を、強く、使いすぎると、歯の表面のエナメル質を傷つけてしまい、かえって、着色しやすい歯になってしまう危険性もあります。市販品は、本格的なホワイトニング後の、白さを「維持」するための、メンテナンスツールとして、あるいは、軽い着色汚れを、リセットするための手段として、その限界を理解した上で、賢く活用するのが、正解と言えるでしょう。